Re・Re ストーリー 第4話 ~どうすればいいか、わからない~

リフォーム(Reform)やリノベーション(Renovation)の事例をストーリーとしてご紹介するブログ記事です。
 私が実際に対応したお客様の事例をご紹介しています。

今回は、介護を終えた女性の “ストーリー” です。

(※これらは当時の所属会社も含む実体験です。個人が特定されないよう、一部内容をぼかしています) 

第四話 ~どうすればいいか、わからない~

登場人物:60代前半 女性 一人暮らし Aさん
築約40年以上 戸建て平屋 

Contents

Aさんとの出会いは、リフォームのショールーム見学会でした。

ご夫婦やご家族で参加されている方が多く、皆さん楽しそうにキッチンや浴室、トイレ等を見て回りながら、次々に質問をされていました。

そんな中、Aさんは少し離れたところで一人いらっしゃいました。
私がお声をお掛けても、『大丈夫です』と控えめに答えられるだけ。
私は内心、「なぜ今日来たんだろう?リフォームしないのかな?」と思ったり、
「何か気になることがあるのかな?」と思いながらも、つかず離れずの距離で見守っていました。
皆さんへの対応が終わり、Aさんの席にいくと、まだ話が出来そうな雰囲気だったので、
改めて向かい合って、お話をお聞きしようと、ヒアリングシートをお渡ししましたが、ほとんど記入されません。

「急いでリフォームしないとダメですか?そんなに急いでなくてちょっと様子を見聞きしたかった」とのこと。
「もちろん、急ぎでなくても~・・・」といつものセールストークのように始めましたが、どうも求めているのは違うように感じました。
そこで、
「今日はどうでしたか?」とだけお聞きしました。
すると少しづつ話してくださいました。 
 急かされるのは苦手なこと。
 営業の電話はしてほしくないこと。
 まだリフォームするかどうかも決めていないこと。

私は、
「もし、少しでもリフォームをしたいとか何か考えたい、とお思いならば、
少しづつお話をしていきませんか?私に出来ることがあるかも知れません」と。
 その日は次の約束もないまま終わりました。

ところが後日、Aさんから直接お電話を頂き、ご自宅に伺うことになりました。

image

訪問の際、Aさんからひとつお願いがありました。
「近所にリフォームの相談をしていることを知られたくないので、そっと来てほしいんです」
とのことでした。
ご自宅は築40年以上の木造平屋。
玄関で出迎えてくださったAさんは、ショールームの時より少しだけ柔らかな表情をされていました。
こたつに入ってお話を伺いましたが、リフォームの話はほとんど出てきませんでした。
代わりに話してくださったのは、ご自身のことでした。

長年お母様の介護をされていたこと。
兄弟姉妹がいる中で、独身だったご自身が中心となって介護を担ってきたこと。
介護のために仕事も早く辞めたこと。
そして、お母様の体調が安定していたので、介護ヘルパーさんとも相談し、
久しぶりに休みをもらい、自分だけ海外旅行へ出掛けたこと。
ところが、その旅行中にお母様の急変が知らされ、帰国するも、
最期に立ち会うことができなかったこと。

「今は後悔ばかりです」
そう静かに話してくださいました。
さらに、
「この家をどうしたらいいか、わからないんです」
ともおっしゃっていました。

離れたい気持ちもある。
でも離れられない気持ちもある。

お母様のためにも、兄弟姉妹や甥姪たちのためにも、この家を何とかしたい。
だけど何から考えればいいのか分からない。
だからとりあえず見学会に参加してみた。
でも場違いだったかも知れない。
そんなお気持ちだったようです。

また、あまり華美に、大々的にリフォームすると周囲からどのように思われるか分からない。
出来るだけ慎ましく生活したい、でもこの古い家では限界もある。
一方、全部まっさらになってしまうのはイヤだ。 
それもどうしたらいいのか分からないの、と。

私はその日は無理にリフォームの話を進めることはせず、またお伺いすると申して帰りました。

次の訪問時は、現地調査を行いました。
予めお電話でどうでしょうか?と伺っていましたので、こころよくお通しくださいました。

現地調査とは、室内外の状況確認や写真撮影、採寸などを行い、
今後の提案のための基礎資料を集める作業です。

しかし私にとっては、それ以上に大切な時間でもあります。
お客様と一緒に住まいの中を歩きながら、どんな暮らしをしてきたのか、どんなことに困っているのか、
そして本当はどんな暮らしを望んでいるのかを知る時間だからです。

Aさんは、まだリフォームをすると決めていたわけではありませんでした。
介護も終わり、仕事もなくなり、毎日を過ごしてはいるけれど、この先どうしていけばいいのか分からない。
そんな状態だったのだと思います。

住まいのあちこちのご不満を話してくださる際は、お母様との過去の思い出も一緒に話してくださいました。
段差が多く母を支えるのは大変で、リフォームしたいと思ったこともあったけど、介護中は出来ないと思って諦めていたこと等、様々な想いを室内を廻りながら話してくださいました。

ご実家には代々受け継がれてきたお仏壇がありました。
けれど、その置かれている場所も傷みが進み、気掛かりになっていたそうです。
「これからも家族みんなで手を合わせられる場所にしたいんです」
そう話してくださいました。

お住まいには様々なお悩みもありました。
床は傷んで沈むところがある。
冬は寒く、夏は暑い。
段差が多く、水廻りも使いにくい。
使わなくなった部屋は物置になっている。
耐震性も気になる。

一方で、
「この和室は残したいんです」
ともおっしゃいました。
ご家族みんなが集まり、お母様と過ごした思い出のある場所だったからです。
現地調査をしながらお話を伺っていると、Aさんの言葉には何度も、
「家族のため」
「母のため」
「親族が集まれるように」
という言葉が出てきました。

ただ、
「Aさんご自身はどうしたいですか?」
という問いには、なかなか答えが返ってきませんでした。
長年、お母様の介護を優先し、仕事も辞め、自分のことは後回しにしてこられたAさん。
介護が終わった今、自分のために何をしたいのか、自分はどう暮らしたいのか。
それを考える時間が、これまでなかったのかもしれません。
私はリフォームの打合せをしながら、住まいの話だけでなく、
「これからどんな毎日を送りたいですか」
というお話も少しずつ伺っていきました。

すると、以前は旅行が好きだったこと。
介護が始まる前は、もっと外へ出掛けていたこと。
機会があれば、また旅をしたいと思っていること。
そんなお話も聞かせてくださいました。
最初は「家族のため」ばかりだった言葉の中に、
少しずつ「自分はこうしたい」という気持ちが見えてきたのです。

私は、その想いも含めてプランを考えていきました。
大きく間取りを変えるのではなく、今の住まいの良さを残しながら、安心して暮らせるよう整えていく。
皆が集まりやすい空間をつくること。
玄関を少し使いやすくすること。
段差を解消すること。
寒さや暑さを和らげること。
そして、これからも大切なご家族が集い、お仏壇に手を合わせられる場所を整えること。
そんな提案を進めていきました。

ご提案を重ねる中で、Aさんの表情は少しずつ明るくなっていきました。
最初の出会いから約1年。

ご自身の気持ちと向き合い、ご親族とも話し合いを重ねたAさんは、
「早く工事をしてほしくてワクワクしています」
と笑顔でおっしゃってました。
ショールームでお会いした時のAさんからは、想像できない言葉でした。

工事は住みながらのリフォームでした。
広い平屋の荷物を移動しながら、エリアごとに工事を進めていきました。
耐震補強や床の改修など大掛かりな工事の時は、ご親族のお宅に滞在しながら毎日のように現場を見に来られました。

お仏壇もこの機会に「洗い」に出し、工事完了まで大切に保管していただきました。

工事が終わり、Aさんとの約1年半のお付き合いも一区切りとなりました。

Aさんからは、
「リフォームするかどうかも分からないまま参加したショールーム見学でした。
でも話を聞いてもらい、一緒に考えてもらううちに、
家のことだけではなく、自分自身のこれからについても考えられるようになりました。

急かされることなく、じっくり進められたことが本当に良かったです」
とお話しくださいました。
私にとっても、とても印象に残る言葉でした。

リフォームとは、古くなった設備を新しくすることだけではありません。
これからどんな暮らしをしたいのか。
どんな人生を送りたいのか。
住まいを見つめ直すことは、自分自身を見つめ直すことでもあります。
Aさんは住まいを整えることで、未来へ向かう一歩を踏み出されたのだと思います。
私も、そのお手伝いができたことを嬉しく思っています。


今回は、あくまでAさんの事例です。
大切な人との別れは、誰にとっても大きな出来事です。
そんな時にリフォームのことまで考えられない、という方もいらっしゃると思います。

一方で、住まいを見直すことが、自分自身の暮らしや人生を見つめ直すきっかけになることもあります。
リフォームとは単なる工事ではありません。
これからの暮らしを考えること。
そして、これからの自分を考えることでもあります。

もし今、
「どうしたらいいのか分からない」
そんなお気持ちを抱えておられるなら、まずは住まいのこと、暮らしのことを一緒にお話ししてみませんか。

答えはすぐに出なくても構いません。
住まいづくりの第一歩は、工事ではなく、自分の想いを整理することから始まるのかもしれません。

以上、過去のリフォームストーリーでした。
いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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