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耐震リフォーム 耐力壁 編

前回blogの屋根の軽量化について書きましたが、今回は壁を強くすることについて、書いていきます。

この記事は こんな方にお勧め

 耐震リフォームをどうするか等、耐震工事に迷っている方、こんな心配やギモンをお持ちの方
・自分の家は大丈夫? どうすればいい?
・簡単に調べる方法は?
・どんな工事をするの?
・住みながら出来るの?
・もっと簡単にできないの?
・結局、どうすればいい? おすすめは?


この記事を読めば、耐力壁の耐震工事をどのようにしていくかが分かり、耐震診断や耐震工事を行うかどうか、
判断の参考になるかと思います。 
基本を知ることで、自分達の条件にあった工事内容で進めていくことが出来るでしょう。

目次

 自分の家は大丈夫? どうすればいい?と思っている皆さん、まずは耐震診断をして、
現在の自分の家がどのくらい地震に強いか弱いか等を把握しましょう。

・耐震診断って? 


  建築士や耐震診断士という専門家が診断する耐震診断には2種類ありますが、
主に「一般診断法」で診断します。
 これは図面を確認したり、現地調査で床下や屋根裏から筋交いの有無、基礎の劣化などを確認したり、
施主から 増改築の有無や雨漏りなどトラブル有無等をヒアリングしたり、という事を行います。
図面が無い場合や、現在と変わっている場合などは寸法を測り、図面を起こす(作る)ところから行います。
これらはどうしても労力が掛かるため、費用も割高感があります。
耐震診断には自治体からの補助金もありますので、問合せてみるのも一考です。(全額補助ではなく一部です)


 
また、現地を見ないで図面と写真、ヒアリングだけで行う耐震アドバイスを行う場合もあります。
 ( ⇒ 弊HPご参照) 


「一般診断法」という耐震診断はあくまで現地調査して詳細を確認しないと正しい判断はできません。
図面には筋交いの有無が不明だったり、仮に記載はあっても実際は取付けされていない場合もあるためです。 
現地調査をせずに図面や仕様表、ヒアリング、写真だけで耐震の【アドバイ】を受けることもアリですが、
精度が落ちる(あいまいな部分が残る)ため、あくまで参考に留めるようにしましょう。

・耐震診断の意義


 耐震診断を行い、どこがどの位弱いのか、不足しているのかを知ることは、今後の対策をしていく上で大切です。
弱いところを効率的に補強できて無駄な工事や対策を減らせます。また、全体を知ることで、費用をどこに、どの程度掛けるのか、判断基準が明確になっていき、その後のリフォーム工事での迷いが減ります。

よって耐震診断を行う場合は、現状の結果を把握すると同時に、「補強計画案」も出してもらうようにしましょう。
どこの壁を追加したり強くすれば、耐震力がアップするのか?を把握して、リフォーム時に取り入れるようにしましょう。

耐震力のアップは、「構造評点」という数値で表わされます。評点1.0以上になるようにすれば、まずは合格・OK となります。 
 補助金が出るのはこの評点が1.0以上となり、古い家の場合、1.0になるための耐震補強工事に膨大の費用が掛かる場合も有り、評点1.0以上にして補助金をもらうのが良いか、評点にこだわらず出来るだけのことをするのがよいか、は内容と予算からよく検討する必要があります。

私は耐震診断士で一級建築士なので、やはり評点1.0以上にすることがベストであり、必須だと思いますが、一方で出来る範囲だけでも、少しでも耐震補強を行うことも重要だと思ったりします。

評点をクリアした理想的耐震が出来れば Very Good ですが、
better や more than など落としどころを決めていくことも大事です

まずは現状を知って、少しでも進める・考えていくことが大事です


耐震診断を専門の建築士などにお願いする場合、それなりに費用が掛かります。現地調査や図面作成、診断するための各種入力作業から診断書作成など、時間も掛かります。
 無料で行ってくれるところもリフォーム会社によっては有るようなので、リフォームを検討中だったり、そこのセールスに乗っかってもいい、という方は利用してみても良いかも知れません。
ただ、「ここを補強しましょう」というアドバイスが本当なのか、セールスのためなのか、判断に迷うことも出てくるかも知れませんので、診断結果の説明を良く聞く、診断書を必ずもらう等、注意が必要です。
 以下に住まい手各自で出来る簡易な耐震診断をご紹介します。以前から有りますので、もう知ってるかな??

・自分で出来る耐震診断


  「誰でもできる わが家の耐震診断」(財団法人 日本建築防災協会)
   https://www.kenchiku-bosai.or.jp/taishin_portal/daredemo_sp/

 これは、私たち耐震診断士も行政の無料相談会などで利用するパンフレットと同じで、今はwebサイトで診断できるようになっています。ぜひ一度行ってみてください。

・新耐震基準の木造住宅の 所有者等による検証


  上記と同じサイト「日本建築防災協会」の耐震支援ポータルサイトの中に、
 新耐震に特化して説明しているところがあります。
  https://www.kenchiku-bosai.or.jp/srportal/woodenhouse/8100-2/

 この中の「関連資料」の2つめ
 「参考1)木造住宅の耐震性能チェック(所有者等による検証)」
  リーフレット(PDF 8枚)で説明を読みながらチェックしていきます。
 後半部分など専門家にお願いしたほうがよい項目もありますが、まずは各自でご確認されるとよいでしょう。 
 (専門家も似たような調査で現地に行きます。それだけで費用が掛かってしまいますよね)

これらの診断結果が思わしくない場合や不安に感じる場合は、専門家(耐震診断を行っている建築士や事務所)に耐震診断を依頼したり、まずは相談してみてはいかがでしょうか。

・建てた当時の図面、or 現在の図面が 必要


 耐震診断を行ったり、アドバイス相談をする場合、戸建て住宅ならば、建築確認の検査済証と一緒に図面を保管していると思います。
 建売りや中古住宅を購入された場合は図面が無い場合も多く、その場合は一から調査になりますので、出来るだけ図面を探してみましょう。
 とても古いお家の場合は図面が無い場合も多いでしょう。その場合もまずは現地調査して図面を作成するところからスタートします。費用は掛かりますが、図面が有ると今後のリフォームや売買などにも使える場合が多いので、良い機会と捉えてみてはいかがでしょうか。

耐震診断で現状がわかり、「耐震補強計画」でどこを補強すれば良くなるかが分かれば、
工事箇所の最終決定などは、見積もりやリフォーム内容などから決めていきます。

「補強計画」どおり=設計側からの提案でスムーズに工事箇所が決まる場合もあれば、リフォーム計画や打合せを進める中で、「ここに耐震壁があるととても困る」「耐震補強の位置を替えてほしい」と再検討(再計算)が出てきます。
なので、なので補強案まで考える場合は、予めリフォーム計画の希望なども打合せしておくと良いでしょう。 

キッチンを対面に出来ればしたいけど・・・など叶う叶わないに限らず、要望を出していくことも大事ですね。出来る事、難しい事、費用が掛かる事などが分かってきます。


 新たに作る場合は、柱を立てて壁を作るので、上下に梁や基礎があるかどうか、の現地確認や工事費用も検討していきます。基礎を新たに作る場合は費用や工事期間が増えてしまいます。
窓を小さくして壁を立てる場合は、サッシの枠が外せるか、柱を立てられるか等の現場確認も有り、全部のサッシ枠を外すと外壁工事が発生しますし、部分的にサッシ枠をカットするのは難しく、外側に新たに耐震補強するなど、見た目の検討も必要になります。

 既存の壁を頑丈にする場合は、壁を一部めくって筋交いを入れたり、真壁(柱と柱の間に壁が落とし込まれている)の柱部分に構造用合板をビス止めしていき、強度を出すので、大壁の洋風の室内になるのが一般的です。 筋交いは天井裏の梁や基礎上の土台という材料に金具を使って留め付けるため、工事としては簡単ではありません。

ただ、現在は筋交い以外の他の工法も沢山有り、工事がコンパクトに行えるようになっています。
簡単な工法は、民間企業が開発した工法で(一財)日本建築防災協会により技術評価された工法を使うようにしましょう。自治体の補助金を使う場合、工法が技術評価されたものか確認しておきましょう。 
 EX. かべ大将(ダイケン)、かべつよし(エイム)


耐震補強の壁補強工事のうち、先にお伝えした民間企業が出している評価認定された工法ならば、床や天井を剥がさずに工事できるようなので、大掛かりにならずに短期間で終わるでしょう。その為、工事する場所を避けつつ、住みながらの工事が可能と思われます。 

 住みながらの工事、と最優先して耐震補強の位置を決めていきつつ、場合によっては難しい場合も有り、ケースバイケースでの判断となります。耐力壁を新たに作る場合などは、基礎部分も新たに作ることになり、床をめくり、地面が見えているところに型枠を組んでコンクリートを流し込むような工事を行います。1日では終わりませんので、住みながらできるかどうかはご相談次第といえます。が、出来れば工事を優先して、補強を減らしたりすることがないようにしてほしいと技術者としてのは想ったりします。

また、壁面の工事を室内側から行う場合、壁面付近にある家具を移動させて作業スペースを確保したり、別室に移動させる等、家具移動が伴う場合があります。予めお客様の方で移動させておくか、移動作業も依頼して見積りに含めて頂くなど、事前に取り決めしておかないとトラブルの元となります。 家具にキズがついたとか工事の埃で家具が真っ白に汚れた、養生してほしかった等、細かい事が積み重なり、お互い気持ちよく進めることが難しくなる場合もあります。
 住みながらの工事は、住まい手も工事側も大変であるということを理解して、慣れているところに依頼したり、事前によく打合せをして進めるようにしましょう。


・耐震補強の工事というのは、頑丈な壁を作る等で、建物を倒れにくくするようにすることです。 

・頑丈な壁=耐力壁というのは、柱と梁で囲まれた壁が、平行四辺形になって崩れないように、又、柱が上下の梁や土台から抜けて倒れてしまわないように補強・緊結することです。
そして、いくら壁を頑丈にしても、壁ごと土台や基礎から外れてしまったり、梁が外れて2階が落ちてくることがないように、上部下部を緊結していくことが大事です。

・耐震補強工事というのは、
 ・耐力壁を作る・既存の耐力壁を補強する
 ・屋根を軽量化する
 ・基礎も補強したり、床面を固めたりする
 など、トータルで補強していくことで倒れにくくしていくことで、耐震の効果が発揮できます。

・耐震補強の工法を確認する


  簡単シンプルな工法で工事を行う場合、技術認定を受けている工法か、確認しましょう
特に補助金をもらう場合やリフォームローンを組む場合は要確認です。


01:1981年5月以前の旧耐震 の住宅の場合 


 築年数は約43年以上となり、通常でも古く傷んできていると思われ、メンテナンスが必要です。
特にお風呂場など水廻りの傷みがひどい場合が多く、タイルが割れていたり、浴室はタイル貼の湿式工法でユニットバスではないでしょう。浴室などブロック塀で壁を立ち上げ、上部のみ木造、でキチンと土台から緊結していたり鉄筋入りの頑丈な作りになっていないケースもあります。
見えない柱の部分や床下、土台など水廻りだけでなく、湿気を含んで傷みが進んでいたり、白アリ被害などで柱がボロボロだったりします。柱の交換や土台の補強など、工事が大掛かりになりがちです。


 
これら傷みが激しい部分だけを工事するというよりは、リフォームも兼ねて、床や天井も剥がして補強するなど、
全体的な補強工事が必要になるケースも多く、工事費が膨らむ傾向です。 
全体的に工事をしない場合は、耐震診断でどこが弱いかを把握した上で、屋根を軽量化する、1階和室などで就寝しない、等、が考えられます。一部の部屋のみ頑丈に耐震補強を行い、家族の命だけでも守るようにしたいですね。

また、家具の固定やガラス障子などケガにつながらないような対策を行っておく、室内は常に片付けておき、頑丈なテーブル下にスムーズに避難できるようにしておくことが大事です。(イスを引いて、家族皆がテーブル下に潜り込めますか?イスを引くことができないほど周囲にモノがあったりしませんか?) 

ご実家が空き家の場合などは倒壊によって周囲の建物に損傷が及んだ場合のことも考えておく必要があります。道路を塞いだり、火事の火元にならないように、空き家の場合も対策をしておきましょう。

02:2000年までの新耐震基準の住宅の場合


 築年数が23年~40年ほどの住宅となり、リフォーム時期だったり既に1度はリフォームしているかも知れませんね。
 まずは図面を確認しましょう
図面を元にセルフチェックを行ったり、建ててもらった工務店や建築会社に相談してみたり、不安な方は耐震診断をしてもらい、現状を把握しましょう。
また、ハザードマップを確認して、地盤の状態や危険度合もチェックしておきます。

2000年以降基準と異なっていて注意が必要な部分は、直下率、バランス配置といえます。2階の外壁の直下の室内に壁面が無い、柱が無い、という場合は補強が必要になってきます。
耐震工事を行う場合は、部分的に済むとは思われますが、リフォーム工事と絡めて行うのも、総額は膨らみますがある意味、効率的といえます。柱や壁が部屋の真ん中に配置しないと2階を支えられない等の診断結果が出た場合、収納スペースをリフォームで作る等を検討してみるのも良いでしょう。

 外壁の劣化度合が周囲の家と比べて進んでいる場合は、少し注意が必要かと思われ、雨漏り等から傷みが進行している場合もありますので、耐震診断も兼ねて現地調査で見てもらうのが良いでしょう。

その他、3階建てや、1階をビルトインガレージにしていたり、変形の間取り、なども耐震診断してもらうのが良いでしょう。

03:2000年以降の2000年基準の住宅の場合


 23年以内の住宅となり、最新の基準で建てられていて安心できるかと思われます。
図面を確認したり、取引時の資料を確認し、耐力壁が基準値以上か、地盤調査は行われていたか等、確認しておきましょう。また、間取りについては、「わが家の耐震診断」でセルフチェックしておき、不安なら専門家から図面を見せてアドバイスをもらうと安心です。

この時期の木造住宅は、耐震の計算やバランスチェックを行い確認申請をしています。申請上の提出は必要ないですが、設計士には各自でクリアしておくように求められています。
耐震診断のPCソフトも出回り、各会社でチェックして耐力壁をどこに配置するかを決めて工事に掛かっています。また、接合金物など細かく取付について基準を決められており、大工さんは面倒だと思いつつも、その通りに行えば強度が確保できるので一気に普及しました。 なので、基本的にはキチンと耐震性は確保されているはずですが、図面が無いとか、セルフチェックで不安があれば、耐震診断を現地調査して行ってもらうのが良いでしょう。

入居後に増築を行っていたり、確認申請とは異なる工事内容での住宅の場合、現在では違反となるケースが往々にしてあります。 


 現在は建築基準法に違反している建物については厳しい状況になっており、被災時の補助金も下りない、売買も難しい等、もちろん耐震診断の補助金も下りない、銀行ローンも組めない等になっています。
ただ、昔はそこまで厳しくなかったために違反物件が多かったのも事実で、自治体によっては違反でも(程度によりますが)耐震診断の補助金など出してくれる場合もあります。(自治体としては耐震化率を上げたいので)

 増築も当初は平屋だったのに2階増築など、明らかに1階が弱いであろうと想像できる場合があります。頑丈に作られているようでも、耐震診断や建築基準法の構造の基準からはOKとは言い難い状況だったりして、ご相談をお受けした折に、「そんなはずはない、頑丈に作られているはずだ」とおっしゃる方も、又、現地を見て見た目は頑丈そう、という場合でも、基礎部分から上物の全てを検討して結果をお伝えすると、愕然とされる方もいらっしゃいます。 
 特に一家の主が大工さんなどご自身で建ててきた場合や親戚に建ててもらった場合等は、
中々現在の基準法にのっとった強度からの診断結果を受け入れていただけない場合も有り、そのことが
耐震補強工事を行うという決断を遅らせてしまう場合も有り、ご家族皆さんで悩まれる、というケースもあります。 

又、建築基準法に違反している場合などは、その事実やそうかも知れないけど…という事を
建築士に話をしたり、相談することは勇気のいることだったり、隠したいことかも知れません。
また、知らずにそのような状況になっている場合も往々にしてあります。 まずは今の状態を知ることが大切です。
もちろん、建築士の立場からは、出来ることは限られています。違反したままリフォーム工事を行う場合、内容によっては違反に協力したと受け取れらかねないという事でリフォーム工事を断られるケースもあります。もちろん違反部分を是正(直す)していけば良いのですが・・・ リフォーム工事のローンも組めない場合があるので(ほぼ現在はそのようです) 是正して正しい状態にもっていく、又は建て替えなどが選択肢と出てきます。 
最終の選択や決定は、お客様自身にあります。

耐震診断を行う事は、今までの住まいの状況を詳らかにして、住まいの経歴を棚卸しする作業の一歩にもなるのです。

最後に

耐震リフォームの耐力壁の工事について、耐震診断や工事の流れ等、私の視点からのポイントをご説明をしました。 ぜひ、耐力壁を作る工事をご検討して頂き、少しでも住まいが良くなり、安心して過ごせる空間になるよう、お力になれれば嬉しいです。 最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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