万博では、デザイナーズトイレが話題になっていて、興味からも少しチェックしていましたので、その感想(辛口コメント)です
若手建築家に絞っての公募形式にて選ばれたトイレ群は全部で8つ。費用面などで注目を集めましたが、私はどちらかというと、動線や使い勝手が気になりました。
トイレ1

@ TECTURE MAG >FEATURE >2025.04.12 記事より引用

トイレ1 設計:GROUP|井上 岳+齋藤直紀+中井由梨+棗田久美子
東寄りのエスカレーターの近く、ウォータープラザ(東)の前辺りで、
急いでトイレ利用するなら、ウォータープラザの中にいくべし、という不評のトイレであった。
真ん中に中庭が有り、外側の各扉からトイレに入って、中庭側に出て手洗いする、という動線。
外側のトビラの前に各自並んでいて、利用者の並び方が、フォーク型ではなく、並列型という従来(昔の)並び方。
円形の外側にドアがあるので、行列が無い場合は利用者は空いているところを探しながら周囲を一周したりして、空いているところを見つけて利用する。 空いている表示が電光表示の為、日中はわかりにくい。
行列が出来ていると、その後ろに並べばいいのだが、これまた、どの列に並ぶのか、周囲を歩いて探すようなことになる。
無駄に歩き回る、疲れているのに。。。。高齢者や子供にやさしいとは言い難い。
グルグル回って、どこも利用中の場合、一瞬どこに並ぶのか考えてしまう。そういう考える事をしないで済む動線というか、迷いが生じることをなくしてほしい、と思った。(個人の感想)
それで、会期中に観察していると、3~4個のユニットごとにフォーク型で並んで利用するようになってきた。
それも警備員が立っていて誘導している。どこが空いているのか分からないから。。
電光の表示は、ライトが消えていると空いてる、のだが、初めてなのでよく判らない。
なので、警備員さん(誘導係さん)が、空いてますよ、と声を掛けてくれる。結局ドアにもベタベタと注意書きが貼ってある。 なんでも初めてのことは仕方ない、けれども、これではイケないのではないだろうか?? 一目でわかる事、説明しなくても理解できる事、これがデザインのチカラでは?


それで、何とか並んでやっと順番がきた。入ってみて、なぜ時間が掛かるのか、よくわかった。
まず、用を足すためにドアを閉める。説明を呼んで、ボタンを押す。
これでロックが掛かる、と書いてあるけど、心配なので、ドアハンドルを何度かガチャガチャして、閉まっていることを確認する。 あ、反対側にもドアがある。これも締まっているか確認する。
ここまでで少し時間が掛かっているのが自分でも分かる。
荷物を掛けたりして、用を足して、終わると、反対側のドアから出るんだけど、ボタンを押すと解錠する。
すぐ出ないと、入口だったドアから、空いたと思って、すぐ入ってくる(警備員さんが分かってきて、少し経ってから、開けるようになる)
荷物を持ったりして、すぐ出る。そしてその出口ドアをすぐ締めないといけない。
なんて、面倒なんだろう、と思ったのが正直なところ。
ボタンを押しても締まっているかどうか、視覚的に確認できないので不安になる。
ドアが2つも有ることも何だか怖い。誰かドアの外に人はいないのか?

このトイレは実験的で、今の普段使っているトイレがシンプルで最適解であることを教えてくれた、という意味では良いトイレだと思った。
また、トイレの外に、用を足すために並ぶのは、「今からトイレに入りたいヒトです」と通行人に分かるようで、なんだか私はイヤだ、恥ずかしいなあ、と思った。
そして、行列が通行の邪魔になっている。(上記写真)(右奥はポルトガル館)
このトイレは、広場の中にあって、人々が広場を横断してお目当てのパビリオンに行く、いわば動線上に存在している。そこにトイレ行列が交差する。カオス状態。
トイレ外の行列も含めてトイレ空間ではないのか。
トイレという箱を作るだけでなく、動線や心理など様々なことを想像してほしいと思った次第です。
トイレ8

@ TECTURE MAG >FEATURE >2025.04.12 記事より引用


トイレ8
設計:斎藤信吾+根本友樹+田代夢々 / 斎藤信吾建築設計事務所+Ateliers Mumu Tashiro
センターのウォータープラザ付近にあるトイレ。近くにはシグネチャーパビリオンのヌルヌルや、いのち動的平衡館がある。
こちらも最初はトイレかどうかわかりにくい。表示がない。行列ができるほど入場者数が増えてから、やっとトイレとして認識。 入口と出口が異なる一方通行方式のトイレ。 一方通行方式の場合、出口には、大きく表示が無いと、奥まで入っていって、出口と分かって引き返す。これはよくない。
せめて床に一方通行の出口であることを表示してほしい(床面とかにあるといいかも)
ポリカ素材など周囲に圧迫感を与えない外観は、ヌルヌルなど周囲の建物とは調和してて、主張していない点は◎
しっかし、暑い。トイレする空間が暑いのだ。まあここだけではないから我慢する。でも空調無し。夏場は、汗かきながらはツライ
トイレ2

@ TECTURE MAG >FEATURE >2025.04.12 記事より引用

トイレ2
設計:小林広美+大野 宏+竹村優里佳 / Studio mikke+Studio on_site+Yurica Design and Architecture
リングの南西近くにあり、大阪城の残念石(再建用に切り出されて使われずに残った石材)を活用したトイレ。
これも最初、パッと見た目にはトイレとはわかりにくい。かろうじて、案内板が立ってるので分かる。
行列が出来るようになると、トイレだと判って、並びやすくなる。
(デザイナーズトイレの話題とか、会場内の珍しいトイレとか、どこまでのヒトが事前チェックしているのだろうか。初めて訪れたヒトにも分かりやすい表示はキホンだと思う)
外側からの利用個室と、屋根の下からの利用個室が有り、女性専用は屋根下。
今回の万博ではジェンダーフリートイレが多く設置されていて、時代の流れか?万博のトイレ方針が(そんなのが有るのか?)ジェンダーフリートイレを〇個以上、とか決めていたのかは不明だが、とにかくあちこちにある。
慣れてないせいか、ちょっと利用をためらう。男性が使ったあとには入りにくい・・・便座を拭く消毒液は有るのか?なさそうなので利用しなかった。
トイレ3


トイレ3
設計:小俣裕亮 / 小俣裕亮建築設計事務所 new building office
リングの西外側にあり、近くにWASSEがある。
他のトイレに比べて、「オオバコ」トイレである。助かる。
こちらは他のところより動線はマシでした。
左写真の、左出入口からは、ジェンダートイレに並ぶ人たちとぶつかりながら、奥の中央エリアにいく(写真右のオープン部分) 左手前方向(大屋根リング方向)から来ると、何かがわからない。出入口も分からない。右に回るとメイン出入口、という表示が欲しかった。
中央エリアから、男性用、女性用にいく入り口が明確に分かる。
こちらも、入口と出口が別になってる一方通行方式。 行列が出来ていると、入口がどこかも分かる。
しかし、なぜ沢山あるのに行列が?? それは沢山ある個室が、迷路のような配置になっているから。 どこが空いているのかがわかりにくい。 出ていく人は反対側に出ていくので、奥の方が空いたのかどうかが、人が手前に戻ってきたら空きがわかるのに、一方通行ゆえ、わからないのだ。
奥まっているから、使うのは手前の空きが分かる範囲の個室だけ。 迷路のような動線のトイレはNG。 やはり高速道路のサービスエリアのトイレは良く出来ているね、動線が分かりやすい。
他と違って良い点は、行列が建物内にある程度納まっていること。中央のエリアが並んで待つエリアとなる。雨の日や暑い日差しからは屋根があると助かる。
この建物は、木造で屋根が空気膜になっているらしい。全然気が付かなかった。
こちらも暑い。ベニヤ板の個室は、なんだか音が隣に聞こえそうで気になる。安普請なカンジのトイレドアは少し不安。これがエコであり、SDGSであるんだけどね。
なんじゃかんじゃ言って、いつものトイレが如何に分厚く囲まれた空間だということを自覚する。
トイレ4

@ TECTURE MAG >FEATURE >2025.04.12 記事より引用


トイレ4
設計:浜田晶則建築設計事務所 AHA|浜田晶則
北西エリアのリング外、ブルーオーションドームの横にあるトイレ。
大型の3Dプリンターで、各地の土を出力して土の壁を作って、外壁やランドスケープとして構成。
手前左側にはジェンダーフリーやバリアフリー用のトイレが並ぶため、
その横を通って(並ぶ人と道を譲り合いながら)、奥のトイレに並ぶ。 ベビーカーで待つ人の横を通るって、通路が狭い。そしてこの通路まで女子トイレの行列が続いてきている。
さらに折り返して並んでいることにびっくり。見えないんだから。
トイレ数は多めで8個ぐらい。 これは多い?少ないでしょ。 長蛇の列。
屋根が無いから、暑い。熱気が籠っていることは無いため、他のトイレよりマシだが、屋根を付けるかどうかは悩ましいところです。


手洗いは、今時珍しいハンドルで水を出す。コロナ禍以降、センサー式に慣れてしまっているので、ある意味原始的で省エネ(電気を使わない)なところは従うしかない・・・ 如何に普段が過剰な?便利な環境にいるかが分かる。
(でも、洋式便座には、消毒液は欲しいんだけどね。徹底してエコ、なので、自分で必要なら持参するしかない)
ただ、化粧直しスペースが無い。このトイレだけじゃなく、全般的に言えることだが。
この写真のミラー付の洗面台は、この前にズラッと行列ができているので、ゆっくり化粧直しなどが出来ない。
化粧直しといっても、日焼け止めを塗りなおしたり、冷却タオルを巻きなおしたり、といった、ちょっとした身支度整え作業のこと。リュックの中身を入れ替えて、上着を出し入れしたりとか、あれこれと行うスペースはトイレ空間には無い。
タオルを濡らしたり、水筒を洗ったりと、ついで作業も出来ない。
まあ、混雑するからトイレ内ではしないでね、という事なんだろうけど、近くのベンチに座って行うには、また同行の人を待たせることになる。スカーフやマスク、帽子やミニ扇風機を首から掛けて、とミラーを見ながら整えたいことが沢山ある私であった。。
どこのトイレもそうだが、トイレでの化粧直しカウンターがなかったのは、地味にストレスだった
西側 トイレ



デザイナーズトイレではないみたい。西側の周回バス乗り場の近くのトイレ。
どこが入り口か、わかりにくい。出口が手前にあるけど、一方通行方式で、皆、間違えてオロオロ。
会期後半になると行列が出来て、トイレの列だと分かる。
この距離を間違えたり、表示を確認する為に歩き回るのは、高齢者や疲れてきた私達にはツライ。
中の個室も向かい合っている通路が狭く、ひとりずつしか通行できない。うーーん。
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以上が私が実際に行ったデザイナーズトイレ です。
他にも2億円トイレとか、色々有って、良いトイレもあるとは思いますが、、、
全体的には、デザイナーズトイレの個々の問題もあるかも知れませんが、
全体の数量や配置、視認性などビジュアル面と絡んだ動線計画など、もう少しトイレ部門専門の統括者がいてもよかったのではないでしょうか?(いるのかな? 多分いない。入場者数に対して絶対的に数量が足りてないよね。 ディズニーではこんなに並んで待たない)
少し辛口コメントになってしまいましたが、トイレ利用度が高い私からすると、楽しむ時間が少なくなったり、楽しい気持ちをトーンダウンさせてしまう一因が、トイレだとも思うのです。
逆にいうと、トイレなどの基本的な環境が整っていたり使いやすいとヒトは楽しく過ごせるのではないでしょうか。
又、事前の話題として「若手建築家がデザイン」と有り、利用した結果、トイレ評価がマイナスになる事は、若手建築家への評価もマイナスになりやすい、という事。
一般の人の多くは、『「建築家」「建築を作る側」は、「好き勝手に造形物を作っていいよね、利用者側のことは考えているのかね?」 』 という想いを抱きがちです。
多くの人が訪れる機会だからこそ、建築や建築を作るヒト達について好意的に思ってほしい、という気持ちが私には有ります。
大屋根リングの評価は、建築のチカラを多くの人に実感してもらう機会にもなり、さらにはそれを考え出した建築家って素晴らしい、という風に繋がっていっています。 トイレを作る建築家の人達も、もう少し利用者側の目線に立った建築を作ってほしいなあ、と思います。
まあ私自身、このような大会場でトイレを作るのは、簡単なようで難しいことなんだな、と改めて感じた次第です。
また、エコやSDGSのテーマと、トイレとどこまで何を絡めるのか。私自身が過剰な部分も有る、と再認識できましたが、中々これをそぎ落としていくには難しいなあ、とも思ったりしました(消毒液が無いとか、化粧直しのカウンターが欲しいとか。蛇口のハンドルレバーは自力とか)
以上、最後までご覧頂き、ありがとうございました。
【万博MEMOry ~EXPO note~ 】自分の記録として・・・・








