
リフォーム(Reform)やリノベーション(Renovation)の事例をストーリーとしてご紹介するブログ記事です。
私が実際に対応したお客様の事例をご紹介しています。
リフォームやリノベーションの事例というと、写真などのビジュアルでビフォーアフターを紹介するのが一般的です。
ただ私の場合、お客様から「写真掲載は控えてほしい」と言われることもありますし、
内容によっては、見た目だけでは伝わりにくい想いもあります。
また、リフォームというのは単に「古いものを新しくする」だけではなく、
そこに暮らす人たちの想いや事情が深く関わっています。
なので、写真ではなく“ストーリー”として、ご紹介します。
(※実体験ですが、個人が特定されないよう、一部内容をぼかしています)
第三話 ~ 古民家は魅力的? ~
登場人物:70代後半 Cさん(お母様)
50代 Eさん(娘さん)
築年不明 木造平屋 古民家ほか
古民家をリフォーム すべき?
クライアントになるCさんEさん親子との出会いは、
私が古民家リフォームの設計経験が有る、ということで是非対応してほしい、と
同じ設計仲間から紹介を受けたのが始まりでした。
CさんEさんが住む古民家は昔ながらの住宅街の中の広い敷地に建つ、お屋敷でした。
ご訪問し、通された母屋となっている古民家のリビングダイニングは既に洋風にリフォームされていて、
私の出番は?と思ったのが最初の印象でした。
ただ、そのリビングダイニング以外は古いままで、冬は寒く段差も多く、
お母様のCさんが暮らしにくそうなのは一目瞭然でした。
ただ、リフォームしてほしいのは、この住まいというよりも他にも有る同じ敷地内の複数の建物をどうするか、というお話でした。 もう一つの古民家は住まわれていないようで、傷みも進んでいたため、現地調査をして概算をはじいても、かなりのお費用になりそうでした。
最初に、CさんEさん親子からは『実は急いでいない。納得いくものを作りたい』とのことで、
様々なご提案や調整をしていくということで、設計契約を結ばせていただきました。
(詳細後述)
まずは、それぞれ(2件)の古民家をリフォームしてご要望を詰め込んだプランのご提案。
これにはやはり2か月近くかかりました。2週間に1度程度のお打合せをしながら、現地調査を私の方で見れる範囲で見ていき、図面化する作業からスタートしました。
提案時には、間取りプランのご説明やインテリアパースをお見せしながら、
「リフォームするとしたら」と緩急織り交ぜてご提案いたしました。

実はCさんEさん親子の古民家に対する思い入れは、
『先祖代々だから守らなければ』という意識であり、
親世代や亡くなったご主人の為に壊すのは申し訳ない、だから維持する必要がある、という
『義務感から』というものでした。
私から、勿体ない、とか、これは貴重だ、と各所や部材をみてお伝えしても、
世間一般が抱くような、古民家らしくとかレトロな雰囲気を活かして、等のようなイメージを維持したいとは思っていないのです。
これは以前も私が古民家案件をリフォームした際に
そこのご主人やご家族の想いをお聞きした際にも同様でした。
『伝統的なものだから継承すべき』であり、そこに今住む人の気持ちや暮らしやすさは入ってません。
古民家に住んでいるからといって、必ずしもレトロの雰囲気や古いものを活かして、とは思っていない、ということなのです。
私は最初こそ驚きましたが、じっくりと住まい手のお話をお聞きしていると、
洋風への憧れや、最新技術や知見を酷使して作られた住まいにとても興味や憧れを抱いていることが分かりました。
確かに、段差も多く、暗い、寒い、使いにくい等、様々な不便不満が古民家にはありがちです。
耐震のことを考えると怖くて住めない、とも言われます。
(古民家はキチンと作られている場合は屋根を葺き替えし耐震補強をある程度行うと、問題はありません。
ただ、古民家=お屋敷=平屋で瓦屋根の面積が広い=葺き替え費用が膨大 で嫌がられるのです)
カフェや民泊など数時間、数泊の滞在であれば古民家のレトロな雰囲気に浸ることができ、
非日常の時間を過ごすことが出来て、人気の空間です。多少の床の傾きも『味』と言われます。
でもそれが毎日になると、又、幼い頃から育った空間であれば、落ち着くことはあっても、
洋風や最新の住まいへの憧れは強いものとなるのでしょう。
私はお客様のご要望を一緒に叶えるのが一番の使命だと思っていますので、
古民家を大切にしてほしい(貴重、希少、再現不可だから)と思いつつも、
設計者の視点だけでなく、暮らしやすくするための方策を提案し、叶えて差し上げたい、とも思っています。
今回も洋風に強い憧れを抱く娘さんのEさんは、古民家リフォームして洋風になることを強く望まれていました。
最初は先祖代々の家を守りたい、といっていたお母さまのCさんも、あまりにも費用が掛かる住んでない方の古民家はもう寿命だと思うように考えが変わっていきました。
リフォームする場合の概算費用を出してご提案しましたが、案の定かなりの高額になりました。
住むことを前提にした場合、耐震補強や断熱性アップ、屋根瓦の葺き替え(土葺き除去)などお客様のご希望箇所(室内)以外にもこれらの費用がどうしても掛かってきます。
お客様親子から、一旦考える、とのお返事を受け、
私が「この金額だと新築を建てられますもんね」とポロッと言ったことを覚えておられて、
ほどなくして再度相談したい、とご連絡を頂きました。
新築を建てたい
もう住んでいない古民家(かなり傷みが激しく、良質な古民家とは言い難かった)を撤去して、
そこに新築して住む案を提案してほしい、というものでした。
リフォームの提案や打合せの中で、Cさん(お母さま)とEさん(娘さん)から、
それぞれの暮らしをどのようにしていくかという話が幾度も出ていました。
一緒に暮らす案や母屋(メインの古民家)と離れ(住んでない古民家)にするのか等、喧々諤々となり、
その都度、私からの設計提案や出来る出来ない等をアドバイスしながら進めてきました。
ですので、新築にしてご一緒に住む案も、今までのお打合せの中から必然的に出てきた案、ともいえるでしょう。

新築とリフォームの違いは、敷地が関係するかどうかです。
新築が可能かどうかは、敷地の大きさや形状の確認、各種法令チェックを行う必要があります。
古い古民家が敷地内に点在し他にも建物があった今回のCさん宅では、
これらの整理から再度行うこととなりました。
登記や所有の確認や相続など、敷地の測量など、新築にするかどうかは未だ決まっていませんでしたが、ある程度平行して行うこととしました。
今までほったらかしにしていたので丁度良い機会だとおっしゃて頂き、
司法書士さん等Cさんが日頃からお世話になっている所に相談して進めて頂きました。
(こちらで対応することも可能です)
敷地の測量や登記のやり直し等、進めつつ、
今回の新築の建物を敷地のどの場所にどのように建てるか、車の出入りや定期的に集まる親族の駐車スペース、既存のライフライン(給排水などトイレを新設するため、どのあたりになりそうか等)様々な条件を加味しながら、新築のプラン案も作成していきました。
新築は「とにかく洋風に」ということで、Eさんが『憧れるわ~』というご近所の住宅街に点在する洋風のお家を巡って(さすが高級住宅街!スゴイ家が沢山あります)、
気に入っているポイントをお聞きしたり(お話したくてしょうがないといったカンジ^^)、と楽しく打合せも進めました。

新築のプラン案も固まり、概算だけでなく工事候補の工務店に見積もりして頂き、費用金額も見えてきました。 費用を算出してもらいつつ、インテリア仕様を詰める時間も取りました。
照明や室内クロス、床仕様など金額にかかわる部分を決めておくことで、
当初の予算からのオーバー(追加費用)を初期段階で組み込んでおくことが出来ます。
時間は掛かりますが、気に入った内容になるかどうかの確認や、ある程度の出来上がりのイメージ把握や手応えといったような事を確認する打合せ時間といえます。
(通常、工務店などは大まかに決まって確認申請を進めている間に仕様決めを行います。
そこで希望と違うことが分かってももう後戻りできません。)
確認申請なども当方で行う為、仕様を決めて間取りなどに変更がないことを確認して、
申請作業に入りますので、メーカーなどでサクサク進む日程とは異なり、時間が掛かります。
この辺りの事もご理解頂き、進めていくことが出来ました。
(2週間に1回の打合せは時には結構シンドイもので(途中でメールや電話でもやり取りがある)、
3週間に一度ぐらいが丁度よかったそうです。
ハウスメーカーや工務店主導の場合、早く進むのはいいが、2、3回で全て決めてしまうのは不安だ、とEさん。今までの家作りからよくご存じだったようで、今回、設計事務所にしようと思っていた、とのことでした)
工事費用の見積もりが出て、工事請負契約を工務店とお客様で行っていただくことと平行して、
確認申請を進めていきました。
予め役所などに事前相談を行っていましたので、
「確認申請の段階になってからダメなことがあり設計変更を余儀なくされた」ということはありません。
ただ、このようにパラレルに進められるのも、全体の設計時間にゆとりがあるからです。
検討時間がタイトだとどうしても確認作業と決定事項が入れ子になってしまうことも発生します。
会社側は慣れていることで「ちょっと位、最初と異なっても大同小異で問題無し」と捉えがちですが、
お客様の方からすると、「え、ここは最終的に異なったら、ちょっと受け入れ難い」と思う部分もあるかと思います。その辺の物理的心理的誤差が段々と大きくなってきて不満に変わる事があるのです。
リフォーム か 新築か 迷った過程が良かった
当初の古民家リフォームを検討するというスタートから2年以上が経って、
やっと新築の木造2階建てが出来上がりました。
迷いに迷って、検討を重ねに重ねて、出した結論でしたので、
Cさん(お母様)もとても納得されていました。 『もうあの古い傷んだ古民家は寿命だったんだ』と。
『もうお終いのお家をお金を掛けて延命しても良いことはないように思った。
これが良いタイミングだったと思う。きっと先祖の方々も分かってくれると思う。
様々な提案資料を見せてくれて、毎日、この場所から眺めて、次の暮らしをイメージできたのが、
娘(Eさん)と過ごす家(新築)だったので、これで良かった』
これらをお聞きして、私もホッとしました。
設計者の立場から、「延命できるからしましょう」「もう寿命だから終わりにしましょう」とは言いにくいですし、仮に説明しても、これらを決めるのはお客様自身です。
お客様自身が納得して次に進むことが出来れば、次の暮らしも住まい(建物)も、お客様の気持ちに寄り添ってきてくれます。
今回、ご一緒に、古民家をどうするか、という検討に時間を費やしたのは必要な時間だったと、思いました。
2年以上、月1~2回のお打合せを続けて、逆に終わるのが寂しく感じた位です。
CさんEさん、ありがとうございました。
古民家の場合、費用が想像以上に掛かること、工事期間も長くなること、材料の入手が難しいためどこをどのように設計するか等や割り切りが必要なこと等が挙げられます。
カフェや民泊、店舗など古民家を活かした活用方法はあります。活用したいと思うクライアント(お客様)の熱量と費用捻出によっても変わってきます。
この事例の古民家は解体する前に役所の方に掛け合い、資料館に保存する一部の部材の寄贈に至ったこと、古材業者さんに解体してもらい材料を利活用してもらった事など行く末を見守ることも出来ました。
住まいは1件々々異なり、それぞれにストーリーがあります。
そこに関わることが出来て、私も嬉しく思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
※参考:設計料 リフォーム提案料(約1年×35000円/月=42万円 →サブスク方式)
新築提案~実施設計(工務店サポート)~設計監理、確認申請等で約220万 (当時)
